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2010年03月05日

仙石通泰ブログ47 Optimization 経営を考える「インタンジブルス」


私の親しい方々による、大変ユニークで面白い本がこの2月1日、祥伝社から上梓されました。231ページにおよぶハードカバーの『「見えない資産」の大国・日本』。この書は日下公人、大塚文雄、ロナルドA・モース各氏3人が「見えない資産」について座談会形式で語り合う、という内容です。

サブタイトルに「中国・アメリカにはない強みとは」とあり、”Japan’s Hidden Power: Intangible Assets”と表紙に英語でも書かれています。ここで言う”Intangible”とは目に見えないもの、無形資産のこと。それは中国やアメリカにない日本独自のものだといいます。

日下さんは東大卒、日本長期信用銀行取締役から多摩大学大学院教授、ソフト化経済センター理事長、東京財団会長を歴任された著名な評論家で著書は200冊を越えます。経済予測や経営戦略論をはじめ都市開発論から人材、文化、戦争論や日本論に至るまで広範囲に論陣を張る保守派の論客です。

また大塚さんは慶応大学でもソニー時代も私の先輩にあたり、わが三技協の常勤監査役として企業運営に参画していただいています。大塚さんは私が提唱し推進してきましたOptimization経営について、監査役ではありますが、実務的アドバイスをいただいています。

またアメリカ人のモースさんはカリフォルニア大学バークレー校卒、プリンストン大学で博士号を取得された柳田国男の研究家で、三技協の社外取締役です。米国国防総省戦略貿易チーム主任研究員、経済戦略研究所副理事長という多彩な顔をもつ戦略家です。

このユニークなキャラクター3人が話し合う「インタンジブルス」という経営資源とは何か。しかもそれは日本独自の強みである、といいます。「道徳と経済は不可分の関係」「道徳の高い国は経済が発展し、道徳の低い国は滅びの道をたどる」(日下)といいます。

日本人の良いところは「礼儀ただしい。弱者をいたわる。他人に迷惑をかけない。他人の悪口を言わない。謙虚である。自分の功を誇らない・・・」とあげればいくらでも出てきます。日本の民話の研究家でもあるモースさんは日本語を駆使する知日派の学者ですが、「日本では、社会に思いやりの心が生きています」と言い、その「心は見えないところで日本経済の成功を支えてきたものだと思います」と語っています。

私がこの本を友人に贈呈する二つの理由があります。一つは、既述しましたとおり大塚、モース両氏が10年以上、三技協の経営に参画してくださっている方であることです。二つ目の理由は「三技協が自ら開発し実践している“Optimization Ware”は日本の独創的な”Intangible Assets”の優れた事例だからです」

次回はこの書に沿って”Intangible Assets”とは何か、を詳しく紹介したいと思います。

2010年01月08日

仙石通泰ブログ46 Optimization 経営を考える「今日の想い」

「七転び八起きの世の中、2010年です」

相模湾は波静か、快晴の正月は実に穏やかで、陽光が眩しく光っています。昨年の日本は経済困難な中で政権交代が実現しました。激動の2009年を忘れてしまうような平安な正月でした。とは、言っても年が変わったから景気が良くなるわけではありません。今年も七転八倒するでしょう。

東証の初商いは、株価の上昇を伝えていたのがちょっぴり明るいニュースでしたが、テレビで経済人の多くは今年がさらに難しい環境にあることを指摘しています。私の初仕事は年賀状を読むことです。毎年、400~500通くらい出し、ほぼ同数の賀状がどっさり届きます。

500枚という賀状を読むのは大変です。でも虚礼廃止という人もいますが、年に一度、几帳面に年賀状を送ってくださる方の名前を読むだけでも懐かしい気分になります。文面は似たりよったりで「がんばります」とか「今年もよろしく」といったありきたりのものですが、それでもいい。

ずいぶん前に逝ったクラスメートの奥様(未亡人という言葉は大変失礼ですよ)の名前をみつけるとそれだけで、十分、真心がツンと伝わってきます。年1回の賀状というのは大変なコミュニケーターではないか、と思ってしばし、その名を眺めてしまいます。年賀状送って下さりありがとう。

ほのぼのとさせるのは家族が写っている写真入りの賀状です。病に倒れ心配していた方が回復し家族といっしょに笑顔で写っている写真、やんちゃだった娘さんがダンナと仲良く写っている写真、会社経営に喘いでいた知人が苦境を忘れたような笑顔で写って「がんばります」というメッセージ・・・。

その賀状を手にして人生、“七転び八起き”という、ありきたりですが、だるまさんの言葉を思い起こしました。転んでも、転んでも起き上がる心意気。それが人生なのだ、と思います。経営が苦しくてもそれを景気や他人の所為にしてはいけません。あくまで自分の力で起き上がることが大事です。

今、確かにものすごい変化が起きています。 この変化について「パラダイム変化」と言う人、「革命的変化」という人、「激震だあ」と叫ぶ人など様々ですが、この変化に名前を付けるとしたらズーッとあと、後世でのことになるでしょう。 政権交代、転んで転んだ末に民主党は起き上がったのです。

変化の規模が私たちにはあまりにも大きくて、激しくて、実際、起こっていること全部が把握されていないと思っています。当分はこの変化を表現できないでしょう。よく例に出される幕末から維新に至る変化、太平洋戦争に負け帝国・日本が滅びた1945年からマッカーサーの対日占領時代。

その歴史に匹敵するような変化が起きているのだと思います。 だから私は「Optimizationだ」、「見える化だ」と叫んでいます。怒鳴り散らしています。世の中もミンナで「七転び八起き」していると思えば良いのではないでしょうか。 いずれにしてもやることが多くて有り難い新年です。

常に起きあがった人や会社もいれば苦しんだ人や会社もあるでしょう。でも誰もが常に起きよう、走ろう、舞い上がろうとしていると思っています。転ぶことを目的にして生きている人がいるわけがない。 年賀状を読んでいるとそれがはっきり分かります。そして「頑張ります」、「今年もヨロシク」、「ご活躍をお祈りします」、・・・と挨拶しています。

2009年12月29日

仙石通泰ブログ45 Optimization 経営を考える「黎明を生きるこころ」⑪

2009年も残り少なくなりました。ことしは本当に世界が激しく変化した年でした。報道によるとことしを象徴する漢字は「新」が選ばれたそうですが、私見を言わせていただくなら敢えて「変」を選びたい。日本もアメリカも激変の年だった、というのが実感です。

アメリカでは共和党のブッシュから民主党のオバマに、日本では自民党が退場して、民主党の天下となりました。この日米の政権交代は、まさに「変」であり、私たちにとってとてもいいことだと思います。それは新しい政権に対する期待ということではありません。

鳩山政権が政治を変える、とは思えませんが、政権が変わったこと自体が、今の時代にとても大切なことなのです。少なくとも同じ人、同じ政党が、同じ考え方で国家運営を続けることでは現在の危機的状況を克服できるとは思えないからです。

もちろん政治だけでなく、経済の世界も大きく変わりました。あの最優良企業と言われたトヨタが赤字でのた打ち回っています。同時に世界規模の景気後退がツナミのようにわが社のような小さな会社をも飲み込んでしまい、厳しい環境に、私ものた打ち回りました。

2010年が良くなるだろう、という見通しは全然、ありません。二番底がやって来るという人もいます。新年が間違いなくさらにのた打ち回る年になるでしょう。でもそれもまた良いことなのです。社会の変化を感知して、この厳しい時代をどう乗り越えるのか考えます。

のた打ち回りながら悩み、反省し、必死に考え込む。そのこと自体がとても良いことだと思います。会社全体をさらに最適化するにはどうしたらいいのか。そうした全社の取り組みが新しいOptimization Companyに変身できる大いなるチャンスなのです。

政治家も平時では本心がなかなか見えませんが、政権が変れば本性丸出しとなる。その政治家の資質や根性、胆力といったものが表面に出てきます。一方で、経済環境が激変すれば、その変化に応じた新しい企業のあり方もみえてくると思います。「変」の時代の闇の中で目を凝らすと一抹の光明を探し当てることが可能となるのではないか。“ごまめの歯軋り”的ではありますが、変化の時代こそ常々言っている「見える化」がさらに進化すると思います。

変化があれば新しいドラマが始まります。そこで意外な発見とか、身の回りの再認識があるかもしれません。そこに私たちが新しい年を迎える根源的な意味があるのだ、と私は考えています。みんな大いにのた打ち回りましょう。良いお正月をお迎えください。

2009年10月20日

仙石通泰ブログ44 Optimization 経営を考える「黎明を生きるこころ」⑩

急激に進行した情報化社会。そこで地球規模の混乱が起きています。わたしたちはその混乱を収める知識と手段を有していると信じていますが、現在の体制を変化させる必要にも迫られています。新たな体制とは過去10数年、わが社で議論してきたOptimization 経営です。

情報社会は議論が活発な社会でもあります。前号でも書きましたが、情報社会における成功者は見える化について熟達した企業です。見える化が最も苦手な従来型の大手マスコミは衰退しつつあり、情報発信機能の提供者はインターネット活用者に取って代わられています。 

知識社会は、まさに“見える化の時代”なのです。自分のしている事とその周辺が誰にでも見えるようになった。間違って見えていた事も真実を見ているか否か判断できるようになってきた。誰もが鳥瞰図を前にして自分の役割を自覚しているのです。

「見える化を伴う部分最適の徹底は全体最適を調和する」と私が提唱している所以です。しかしこの知識社会の急激な広がりに向かって、解消しなくてはならない問題が広く根深く存在し、さらに問題が地底からふつふつと沸いてきます。知識格差が格差社会をもたらす抗争が始まっているのです。

この葛藤が治まるのはいつごろでしょうか?次に出現してくる近未来社会は超民主主義の時代といわれています。それをもたらすものは“利他主義”だというのです。私の使命はお客様の満足を徹底先行して、その結果がわが社に利益をもたらす構造を創ることです。

そのためにOptimization思考を徹底すること、社員の間のワークシェアリングを守る事です。これが知識社会での先行的企業にわが社を進化させることができると信じています。Optimization思考については次回に詳しく書きます。

2009年10月10日

仙石通泰ブログ43 Optimization 経営を考える「黎明を生きるこころ」⑨

歴史的に農業社会において全体最適は為政者によって描かれました。その為政者を助けるために素朴な信仰が体系化された宗教となり、思想が哲学として昇華したのです。世の中のあらゆる部分最適は倫理に叶うことで成立し、人々に生き甲斐を与えたのです。

倫理は自然を対象に発生する範囲に存在したので尋常に部分最適を努めることには大きな障害が発生しなかった。国に忠誠を尽くすこと、親や家族を大切に思うこと、年長者を敬うこと、等々が真面目に仕事をする事や「足ルヲ知ル」といった教訓にも人々の間で抵抗がなかったと思います。

約200年間におよぶ近代工業社会の到来で富は急激に増大しましたが、同時に人間社会に多様多種で複雑な環境をもたらしました。それは社会の進化であり文化の発展となりましたが、20世紀終盤には伝統的な価値観が薄れ為政者は社会全体の成り立ちを描くことが難しくなってきました。

民衆もまた、これまでと同じように為政者の言いなりに生きることに納得しなくなりました。情報ソースを握ることで周囲より多くの利益を上げ、優位性を発生させることが解ると成功者とそうでない人々の間の不公平感が浮上してきたのです。

工業財(材)を活用することによって農業生産性が向上したように、情報機器の活用が工業製品の量も質も上げる結果をもたらしました。サプライチェーンの改善には情報機器の活用が大きな役割を果たして来ました。 さらに見える化が進むとバリューチェーンの改革が起こりました。 情報社会においての成功者は見える化の熟達企業であり、これが情報社会から知識社会に移行中の現在の工業生産の現実でしょう。

情報社会は冷戦時代の東西の壁を取り払うという重くて解決困難な人類の課題を消滅してしまいました。あらゆる情報は人々に簡単に入手可能になりました。また情報を秘匿する事が必ずしも優位性を構築することにはならない状況も現出してきました。

富の増大と移動、分配の手段についても国によって理解の差がほとんどなくなりました。しかもそれは国境の垣根を限りなく低くし、市場規模が急激にグローバルに拡大したが、市場に見合ったルールが設定される前に知識を持った人間が優位に立った事で世界的な大混乱が起こったのです。

2009年10月01日

仙石通泰ブログ42 Optimization 経営を考える「黎明を生きるこころ」⑧

明治維新で近代国家を目指した日本は農業立国から富国強兵策で国家事業としての産業振興に成功し、軍事大国となりました。日清、日露の戦争を経ていったん列強の仲間入りを果たしましたが、大東亜戦争(日米戦争)に敗北し明治天皇制国家が崩壊しました。

しかしアメリカの後押しもあって戦後復興めざましく、日本を工業大国にならしめるため、有効に働いた手段は当初は官民にわたる集中的な投資と労働力でした。国民的技術力の向上意欲は凄まじいものがあり、1960年代後半、工業大国の道を驀進しました。

それが20年ほど前(1990年前後)から国内外の経済環境の激変、混沌に戸惑いながらも21世紀の国家像や産業のあるべき姿について議論が高まりました。国家を問う全体最適論は国民一人一人にとって有意義だったと思います。

そして見える化によるイノベイティブ(革新的)な生産方式が他国の追随を許さない立場に多くの日本の生産業を導いたのです。日本の加工業者を支えた力がナレッジ(知識)であることを経営戦略論で著名なピーター・ドラッカーは多くの著書で唱えていました。

ドラッカーら未来学者は、時代が工業社会から情報社会さらに知識社会へ移行している事を指摘し、それを実感してきたのもこの20年間でした。日本のイノベイティブな生産方式が知識を基本においたものであると気がつきナレッジマネジメント理論を構築したのはアメリカです。

米国は官民にわたる積極的な情報と知識への投資と労働力の育成に努めながら新たな価値を創造することに成功しました。シリコンバレーにおけるIT産業の勃興やウオール街の金融技術の向上がその成功を代表しています。

もっとも利益追求に走りすぎたサブプライムローンの問題でマネーゲームが崩壊し、世界的金融収縮を招きました。現在は反省期に入っていますが、アメリカの根源である、価値の創造性という点ではまだまだ学ぶところがあるように思います。

農業社会から工業社会への移行期に起こったように、工業社会から情報社会への移行期には市場が急激に拡大しました。この移行期における市場拡大のインパクトは広く、大きく、複雑なもので政府、産業界、学界、あらゆる人々が事態を理解しきれず困惑し当惑しました。 

自民党の瓦解的敗北はこの困惑の終わりを物語っているように思えます。有権者は混沌からの脱却を願って民主党に投票した。混沌がすぐに治まるとは誰も思っていないでしょうが新しい規律を望んでいるのです。待ち望んでいるだけでなく自分たちがそれぞれの部分最適を全うすることで新しい全体最適をもたらすと考えているのだと思います。
私は為政者にリーダーシップを期待していません。 実直なオーガナーザーであることを望んでいます。

2009年09月25日

仙石通泰ブログ41 Optimization 経営を考える「黎明を生きるこころ」⑦

しばらくBlogを書けないまま、あっという間に秋です。世界的な景気後退に対処するため三技協では社内機構を大幅に改革し、新しくマーケッティング部門を新設、時代に沿ったビジネスを創造してゆく意欲と情熱溢れた会社に成長したいと体制を整えました。

その間、政治の世界では総選挙で政権交代が実現しました。いま、鳩山首相はニューヨークです。国連本部で2020年に温室効果ガスの25%削減(90年比)を世界に宣言しました。これは世界公約です。麻生内閣の政策の大転換が次々と新政権で打ち出されています。

経営のOptimizationを社内外に語りかけてきた私のBlogを再開したいと思います。過去、三技協が実践してきました経営の最適化はIT技術の導入が前提でした。CM(Cyber Manual)を全社員が駆使することで、経営と業務遂行の「見える化」を推進してきました。

経営の最適化とは、現場における個々の仕事を見直して、最善、最適な環境を作り出してゆくことと、そうした現場の改善努力を積み上げ、統合して経営全体の最適化を図る。前者を「部分最適」、後者を「全体最適」と表現し、社員の協力、努力を促してきました。

お陰でわが社のOptimization 経営は各方面より注目され、内外の学会や経営者、研究者から注目され、私も機会をいただく度にわが社の考え方を話してきました。この経営改善努力は技術サービスをコアとする三技協にとってエンドレスに続くものと考えています。

最大、最重要目標はお客様の満足度を高めることで、実直なマーケティング活動と営業活動そして日々の販売業務を通してお客様の悩みを突き止め、分解し解決に向かうお手伝いを提供してゆくことです。真に“言うは易く行うは難し”ではありますが、Optimization 経営とはそうしたサービスを提供できる会社になろうと言うことです。

政権交代とは官僚主導の政治を退け、政治指導で行政の効率化を追及してゆくというもので、鳩山政権のマニフェスト(政権公約)はまさに国家戦略としてのOptimization 経営を追求するものと言えるかも知れません。滑り出しは順調でメディアも好感しています。

良い事です。付き合ってきた政治家の力量も見える。いずれにしても彼らに頼ってきた事はないし、これからも世の中を展望する眼鏡や鏡として付き合うつもりです。

リーダーを自認している政治家は成功しないと思います。 オーガナイザーとして死力を尽くすタイプの政治家は理解者を得ると思います。マスコミ報道の読み方を間違えないように心がけて行きます。

景気減退で、わが社もまた大きな困難に直面していますが、それを切り拓く有力なツールとしてOptimization –wareを使って価値の創造を高めてゆきたい。ゆっくり焦らず、しかし着実に歩を進めてゆきたいと願っております。

本Blogは経営のOptimization というコンセプトを追究、考究し、業務の改善と経営の健全化を日々、皆さんと考え、議論してゆきたいと言う切なる願いから再開し、Blogを読んだ方々のご叱正、ご意見をいただきたいと願っています。

2009年03月04日

仙石通泰ブログ40 Optimization 経営を考える「黎明を生きるこころ」⑥

世界的規模での景気後退、金融収縮、麻生政権の混迷と暗い話で埋め尽くされてきた新聞紙面やテレビのニュースが続いたところへ、アカデミー・ダブル受賞の報は多くの日本人に輝きを与えました。まさにアメリカ発の嬉しくも明るいニュースでした。

滝田洋二郎監督「おくりびと」が外国語映画賞、加藤久仁生監督「つみきのいえ」が短編アニメーション賞を受賞しました。もっとも華やかな映画祭として世界中が注目するアカデミー賞です。日本人がソフトでも世界のトップを行く水準を証明して見せたのです。

「おくりびと」は遺体を扱う納棺師という特異な仕事を通じて、人間の荘厳な死と生の意味を問う、という芸術性の高い作品で、主演の本木雅弘が好演しています。「つみきのいえ」は12分の短編アニメ。海面が上昇するのに家を積み木のように建て増す老人の物語です。

「おくりびと」は全国183スクリーンで上映中、24週間のロングランを記録し、映画館の興行収入だけですでに30億円を突破、今回のオスカー受賞で、さらに公開国は38か国に増えると景気のいい話です。日本人として素直に嬉しいし不景気を吹っ飛ばすニュースでした。

昨年、東宝のアニメ『崖の上のポニョ』が大ヒット、ポニョ効果で東宝の興行収入は過去最高を記録したそうです。2008年1-9月の映画の興行収入累計は600億円と前年同期比42.0%増となり、過去最高だった前年の収入595億円を9カ月で上回ったのです。

テレビの勃興と隆盛で一時は斜陽産業と言われ、映画館の閉館が相次ぎました。しかし最近、シネコン(シネマ・コンプレックス)という複数のスクリーンで同時にいろいろな映画を上映できる複合映画館が増えました。これはアメリカでのビジネスモデルで、外資が日本へ持ち込みました。

日本のスクリーンは増え続け昨年、25年ぶりにスクリーン数が3000を突破、現在3062スクリーンとなっています。DVDという新たな市場が拡大して映画産業は息を吹き返したように好調です。そこへアカデミー・ダブル受賞という快挙。日本映画の再生に若い映画人が元気を取り戻しています。

明るい話題に触発されて、ビジネスの新たな活路を切り開く経営戦略を期待したいと思います。次回は危機に瀕している自動車産業の話を書きます。

2009年02月13日

仙石通泰ブログ39 Optimization 経営を考える「黎明を生きるこころ」⑤

前回、書いた日本経済の後退はさらに悪化しているとメディアは連日伝えています。今、日本で最大の関心事は「いつ景気が回復するのか」ということでしょう。景気は循環する、というケインズの経済理論によりエコノミストは回復への展望を語っています。

でも日本で、いや、全世界で起きている今回の経済事象は、どうも単なる景気循環論では解き明かすことができないのではないか、と私は疑問視しています。既述しました「もう元の時代には戻らない」というのは漠とした実感だとしか言えませんが私の本音です。

本Blogで「変化」「激変」という言葉を何回も使いましたが、実はわれわれはその「変化」の実態をどれほど認識しているのか、真剣に考えてみたいことがありますか。この春、入社してきた若い新人社員は、コンピューターの無い社会を想像することは難しいでしょう。

過去の社会をイメージすることができないということは変化への理解もなかなか覚束ない*1。何がどう変化するのか。それを以前、書いたことがありますアメリカのアル・ゴア(クリントン政権の副大統領)が比喩的に分かりやすく語っています。

「私たちは決まり文句を使って、起こりつつある変化の巨大さ、そしてその進行の驚くべき早さを表現しようとします」「もし自動車が近年に見られるコンピューター・チップと同じくらい急激に進化すれば、ロールスロイスなど25セントで時速100万マイルくらい走れるようになるだろう」

これはコンピューターの専門家との会合の席でしたが、すると出席したコンピューター技術者が応じます。「まあね。ところで、ロールスロイスも1ミリくらいの大きさになるんだろうね」

「過去10年間に私たちが目にしてきたもの、それは実に驚異的なものでした。しかしこの先10年間に起こるであろうことに比べれば微々たるものにすぎません。革命という言葉も決して大げさな表現ではないでしょう」

ここでゴアが語っている「過去10年間」とは1985年から95年の年代で、さらに変化は2005年向けてどんどん進みました。2009年という年になって過去20年間を振り返ってみますとゴアの指摘がまさにドンぴしゃり、情報通信社会の激変状況を言い当てています。

「Change」を掲げ、時代と戦う自らの武器に使ったのが2008年大統領選におけるオバマ陣営でした。オバマ選対は進化した最先端情報通信技術を駆使しました。映像共有サイト”YouTube”、SNS(Social Networking Service)として急速に拡大した”Facebook”、携帯電話メール・・・。それは「究極の選挙運動のOptimization」、最適化ではなかったか。


事務局注 *1:「おぼつかない」

2009年02月03日

仙石通泰ブログ38 Optimization 経営を考える「黎明を生きるこころ」④

アメリカ発サブプライム問題が世界中に金融不安をばら撒き、各国で金融収縮が起こりました。みんな経済困難を見越してお金を使わなくなった。当然、モノが売れなくなります。とりわけ高額商品の自動車や家電機器の販売台数が落ちています。

新年早々、不景気な話は避けたいのですが、マスコミは派遣労働者のような非正規労働者の失業問題を刻々、報道しています。まるで日本中がホームレスになるかのような騒動です。昨年9月、リーマン・ブラザーズの経営破綻がニュースとなって以降、騒ぎが拡大しました。(リーマンブラザーズの起源は雑貨屋創業が1844年、リーマンブラザーズを名乗ったのが1850年で、158年の歴史に幕です)

ドイツからの移民、ヘンリー・リーマンが南部アメリカ、アラバマ州モンゴメリーで日用雑貨店を開いたのが、この会社の始まりでした。兄のヘンリーを頼って弟のエマニュエルとメイヤーもやってきて、兄の仕事を手伝ったのがリーマン兄弟商会となりました。

南部は綿花の生産地だったことから綿花取引で財を成し、米国有数の金融機関に成長しました。そのリーマン・ブラザーズがサブプライムの煽りで会社更生法の適用を申請、倒産しました。昨年の9月15日のことです。1929年の世界恐慌の危機を乗り切ったのはベンチャーキャピタルでした。皮肉なことにそのベンチャー精神がアダとなったのです。

経済活動が収縮すれば景気は後退します。経営者は設備投資も控え、できるだけ経費を削減しようという方向に心理が働きます。モノが売れなくなれば生産計画を削減し、人員整理→失業率上昇という現象を来たします。景気後退局面に入り、企業家は“守りの経営”とならざるをえないでしょう。

でも本当に日本は倒産が続出するような状況なのでしょうか。エコノミストの見解は悲観論、楽観論それぞれありますが、現状をどう捉えるか、というところがキイポイントではないか、と考えています。いつ景気が回復するか、という期待を止め、視点を変えてみることが大切です。

「100年に一度」と言われる今日の事態から容易に景気が回復するとは思えません。いくら政府が緊急経済対策を出し補正予算を国会で通しても、それで景気が上向く保証はないと思います。2兆円の給付金問題で与野党のせめぎ合いが続いていますが、確かに2兆円ばら撒いて消費が活発になるか疑問です。

アメリカ連邦議会は70兆円という巨額の緊急経済対策費を打ち出しました。1ドル90円換算ですから実際には日本の国家予算に匹敵する大胆な景気対策です。それでも効果が出てくるまでにかなりの時間を要するとエコノミストは言います。

2009年という新しい時代にわれわれが直面している経済困難は容易に克服できる事態ではありません。以前の景気のいい時代にいつ戻るのか、という期待感をあっさり捨て、今の状況で会社はどう生き抜くのか、サバイバル作戦を考えるべきではないかと考えます。

「時代は変わってしまった。もう元の時代には戻らない」ということです。