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2009年03月04日

仙石通泰ブログ40 Optimization 経営を考える「黎明を生きるこころ」⑥

世界的規模での景気後退、金融収縮、麻生政権の混迷と暗い話で埋め尽くされてきた新聞紙面やテレビのニュースが続いたところへ、アカデミー・ダブル受賞の報は多くの日本人に輝きを与えました。まさにアメリカ発の嬉しくも明るいニュースでした。

滝田洋二郎監督「おくりびと」が外国語映画賞、加藤久仁生監督「つみきのいえ」が短編アニメーション賞を受賞しました。もっとも華やかな映画祭として世界中が注目するアカデミー賞です。日本人がソフトでも世界のトップを行く水準を証明して見せたのです。

「おくりびと」は遺体を扱う納棺師という特異な仕事を通じて、人間の荘厳な死と生の意味を問う、という芸術性の高い作品で、主演の本木雅弘が好演しています。「つみきのいえ」は12分の短編アニメ。海面が上昇するのに家を積み木のように建て増す老人の物語です。

「おくりびと」は全国183スクリーンで上映中、24週間のロングランを記録し、映画館の興行収入だけですでに30億円を突破、今回のオスカー受賞で、さらに公開国は38か国に増えると景気のいい話です。日本人として素直に嬉しいし不景気を吹っ飛ばすニュースでした。

昨年、東宝のアニメ『崖の上のポニョ』が大ヒット、ポニョ効果で東宝の興行収入は過去最高を記録したそうです。2008年1-9月の映画の興行収入累計は600億円と前年同期比42.0%増となり、過去最高だった前年の収入595億円を9カ月で上回ったのです。

テレビの勃興と隆盛で一時は斜陽産業と言われ、映画館の閉館が相次ぎました。しかし最近、シネコン(シネマ・コンプレックス)という複数のスクリーンで同時にいろいろな映画を上映できる複合映画館が増えました。これはアメリカでのビジネスモデルで、外資が日本へ持ち込みました。

日本のスクリーンは増え続け昨年、25年ぶりにスクリーン数が3000を突破、現在3062スクリーンとなっています。DVDという新たな市場が拡大して映画産業は息を吹き返したように好調です。そこへアカデミー・ダブル受賞という快挙。日本映画の再生に若い映画人が元気を取り戻しています。

明るい話題に触発されて、ビジネスの新たな活路を切り開く経営戦略を期待したいと思います。次回は危機に瀕している自動車産業の話を書きます。

2009年02月13日

仙石通泰ブログ39 Optimization 経営を考える「黎明を生きるこころ」⑤

前回、書いた日本経済の後退はさらに悪化しているとメディアは連日伝えています。今、日本で最大の関心事は「いつ景気が回復するのか」ということでしょう。景気は循環する、というケインズの経済理論によりエコノミストは回復への展望を語っています。

でも日本で、いや、全世界で起きている今回の経済事象は、どうも単なる景気循環論では解き明かすことができないのではないか、と私は疑問視しています。既述しました「もう元の時代には戻らない」というのは漠とした実感だとしか言えませんが私の本音です。

本Blogで「変化」「激変」という言葉を何回も使いましたが、実はわれわれはその「変化」の実態をどれほど認識しているのか、真剣に考えてみたいことがありますか。この春、入社してきた若い新人社員は、コンピューターの無い社会を想像することは難しいでしょう。

過去の社会をイメージすることができないということは変化への理解もなかなか覚束ない*1。何がどう変化するのか。それを以前、書いたことがありますアメリカのアル・ゴア(クリントン政権の副大統領)が比喩的に分かりやすく語っています。

「私たちは決まり文句を使って、起こりつつある変化の巨大さ、そしてその進行の驚くべき早さを表現しようとします」「もし自動車が近年に見られるコンピューター・チップと同じくらい急激に進化すれば、ロールスロイスなど25セントで時速100万マイルくらい走れるようになるだろう」

これはコンピューターの専門家との会合の席でしたが、すると出席したコンピューター技術者が応じます。「まあね。ところで、ロールスロイスも1ミリくらいの大きさになるんだろうね」

「過去10年間に私たちが目にしてきたもの、それは実に驚異的なものでした。しかしこの先10年間に起こるであろうことに比べれば微々たるものにすぎません。革命という言葉も決して大げさな表現ではないでしょう」

ここでゴアが語っている「過去10年間」とは1985年から95年の年代で、さらに変化は2005年向けてどんどん進みました。2009年という年になって過去20年間を振り返ってみますとゴアの指摘がまさにドンぴしゃり、情報通信社会の激変状況を言い当てています。

「Change」を掲げ、時代と戦う自らの武器に使ったのが2008年大統領選におけるオバマ陣営でした。オバマ選対は進化した最先端情報通信技術を駆使しました。映像共有サイト”YouTube”、SNS(Social Networking Service)として急速に拡大した”Facebook”、携帯電話メール・・・。それは「究極の選挙運動のOptimization」、最適化ではなかったか。


事務局注 *1:「おぼつかない」

2009年02月03日

仙石通泰ブログ38 Optimization 経営を考える「黎明を生きるこころ」④

アメリカ発サブプライム問題が世界中に金融不安をばら撒き、各国で金融収縮が起こりました。みんな経済困難を見越してお金を使わなくなった。当然、モノが売れなくなります。とりわけ高額商品の自動車や家電機器の販売台数が落ちています。

新年早々、不景気な話は避けたいのですが、マスコミは派遣労働者のような非正規労働者の失業問題を刻々、報道しています。まるで日本中がホームレスになるかのような騒動です。昨年9月、リーマン・ブラザーズの経営破綻がニュースとなって以降、騒ぎが拡大しました。(リーマンブラザーズの起源は雑貨屋創業が1844年、リーマンブラザーズを名乗ったのが1850年で、158年の歴史に幕です)

ドイツからの移民、ヘンリー・リーマンが南部アメリカ、アラバマ州モンゴメリーで日用雑貨店を開いたのが、この会社の始まりでした。兄のヘンリーを頼って弟のエマニュエルとメイヤーもやってきて、兄の仕事を手伝ったのがリーマン兄弟商会となりました。

南部は綿花の生産地だったことから綿花取引で財を成し、米国有数の金融機関に成長しました。そのリーマン・ブラザーズがサブプライムの煽りで会社更生法の適用を申請、倒産しました。昨年の9月15日のことです。1929年の世界恐慌の危機を乗り切ったのはベンチャーキャピタルでした。皮肉なことにそのベンチャー精神がアダとなったのです。

経済活動が収縮すれば景気は後退します。経営者は設備投資も控え、できるだけ経費を削減しようという方向に心理が働きます。モノが売れなくなれば生産計画を削減し、人員整理→失業率上昇という現象を来たします。景気後退局面に入り、企業家は“守りの経営”とならざるをえないでしょう。

でも本当に日本は倒産が続出するような状況なのでしょうか。エコノミストの見解は悲観論、楽観論それぞれありますが、現状をどう捉えるか、というところがキイポイントではないか、と考えています。いつ景気が回復するか、という期待を止め、視点を変えてみることが大切です。

「100年に一度」と言われる今日の事態から容易に景気が回復するとは思えません。いくら政府が緊急経済対策を出し補正予算を国会で通しても、それで景気が上向く保証はないと思います。2兆円の給付金問題で与野党のせめぎ合いが続いていますが、確かに2兆円ばら撒いて消費が活発になるか疑問です。

アメリカ連邦議会は70兆円という巨額の緊急経済対策費を打ち出しました。1ドル90円換算ですから実際には日本の国家予算に匹敵する大胆な景気対策です。それでも効果が出てくるまでにかなりの時間を要するとエコノミストは言います。

2009年という新しい時代にわれわれが直面している経済困難は容易に克服できる事態ではありません。以前の景気のいい時代にいつ戻るのか、という期待感をあっさり捨て、今の状況で会社はどう生き抜くのか、サバイバル作戦を考えるべきではないかと考えます。

「時代は変わってしまった。もう元の時代には戻らない」ということです。

2009年01月05日

仙石通泰ブログ37 Optimization 経営を考える「黎明を生きるこころ」③

新年明けましておめでとうございます。ことしも平和で皆様が健康でありますよう祈っております。どうかOptimization Company三技協を本年もよろしくご指導、ご鞭撻をお願い申し上げます。ことしは丑年、ウシのように悠然と生きたいものです。

1月20日、アメリカの大統領就任式で、バラク・オバマ大統領が政権を引継ぎます。若くケニヤ人の血を受け継ぐ異才、異能の指導者です。オバマ新大統領は選挙で訴えてきた公約「チェンジ」を実現すべく、いろいろな新しい政策を打ち出してくるでしょう。

アメリカの政治は8年続いた共和党政権から大統領府も連邦議会も民主党主導に切り替わります。ブッシュ大統領のイラク侵攻や昨年暮れ、サブプライム問題に始まった世界同時不況をどう乗り越えるかが、オバマ大統領への期待とともに全世界が注目しています。

一方、日本は年内に、衆議院総選挙が行われます。国会解散となるのか任期満了による選挙となるのかは、麻生首相の決断次第ですが、前回にも書きましたように職を失う人たちを救済するために政治の出動が待たれています。打つべき手は打って生気溌剌とした年にしたいですね。

わが社も景気後退の激流に無関心ではいられません。社会激変の時代だからこそOptimization 経営の真価が問われるのではないか、と考えています。わが社は採用内定取り消しとか人員削減は致しません。社員の犠牲で会社が儲ける、というのは言語道断です。

社員があっての会社です。もちろんお客様があっての会社であり、株主があっての会社、さらに地域社会の一員としての会社です。私はこの困難な時代に他社がどんな経営をするのか存じませんが、従業員を犠牲にした会社経営は王道を行く経営ではありません。

「100年に一度の危機」という言葉がメディアで踊りますが、「100年に一度の危機」は「100年に一度の絶好のチャンス」でもあると考えたい。それこそOptimization 思考なのです。
みんなで「会社を最適化(Optimization)」するのです。知恵とエネルギーはわが社内にあり。

一人ひとりが考えて、考えて考え抜く。問題解決に熟慮し、悩み、工夫し、試行する。PBTを実施してみる。そのプロセスで何か光が見えてくるでしょう。三技協という会社はOptimization で力強く前進します。

そんなことを考えていますと何か勇気が溢れ、精気が漲ってくるような予感がします。楽しい年にするのは自分自身です。明るい年にするのも私たち自身です。みんが一体となって職場を「カイゼン」し、より効果がでる仕事の方途を創造してゆきましょう。

大切なのは黎明のこころのもち方なのです。本年もよろしくお願い申し上げます。がんばりましょう。

2008年12月24日

仙石通泰ブログ36 Optimization 経営を考える「黎明を生きるこころ」②

師走に入り日本は急激な円高騰と大幅な景気後退で列島大騒ぎです。テレビは連日、製造業の生産調整や採用者の内定取り消し、非正規社員の首切りなど雇用問題を取り上げ、職を失い、従業員寮を追い出される気の毒な人々の越年について報道しています。

この歳末の風景は想像以上に深刻です。9月にアメリカで大手証券会社、リーマンブラザーズが経営破綻した時、こうした事態を予測した日本人は何人いたでしょうか。サブプライムというアメリカ発の問題が全世界に波及し、モノが売れなくなった。世界同時不況です。

20世紀を席巻した輝かしきアメリカの自動車産業が瀕死の重態です。ビッグ・スリーが潰れたら300万人の失業者がでる、と言われ、ブッシュ大統領も救済のためのつなぎ融資700億ドル(約63兆円)を検討しているそうです。市場に任せたら経営破綻必至の状況です。

米ドル安、韓国ウォン安などの煽りで日本の円が急騰、12月後半ついに1ドル80円台に突入しました。昨年、1兆8000億円という途方も無い利益を出したトヨタが今期は赤字転落必至との予測です。トヨタは為替が1円上がると400億円の為替差損がでるそうです。

ソニーもキャノンもトヨタも生産台数を下方修正し、一斉に人員整理に入りました。トヨタが100万台、計画より生産台数を削減すると発表しました。ということはトヨタに収めている部品メーカーも100万台分のパーツが不要となり、生産を削減せざるを得ません。

生産量を減らせばその分だけ人員が要らなくなります。暮れに入って「明日から来なくていい」と言われた非正規社員の人たちの話が話題となり、政治問題化しています。政府は緊急対策を打ち出し、職を失った人をどう守るか必至です。とんだ年の暮れとなりました。

2008年もいろいろなことがありましたが、今回の事態は短期に改善できる問題ではありません。景気後退は世界的、グローバル経済全体を覆っていますから回復には時間がかかります。こうした環境の変化で、ある日突然、ビジネスが成り行かなくなる瞬間を迎えます。

会社は行き詰り倒産という悲惨に直面します。それを私は「産業の突然死」と呼んでいます。人間に突然死があるように会社にも突然死がある。会社を取り巻く環境の変化を敏感に読み取って、その変化に対処できるかどうか。時代を読む感覚が生死の境目となります。

2008年を象徴する言葉は<>でした。<化><激><革>などいろいろ読み方はあると思います。その変化はビジネス界にも押し寄せ、会社は<身>せざるをえません。秋葉原の殺傷事件とか振り込め詐欺の頻発とか食品偽造・偽称・・・何か<>ですね。

除夜の鐘の音を聞きながら私の周辺で<産業の突然死>をどう阻止できるのか、じっくり考えながら2009年を迎えることになりそうです。オバマの登場でアメリカが<>わり、世界が<>わります。<>わらない平和な楽しいお正月をご一家でお迎えください。
(今日の画像は、今年最後の講演の一景です)

2008年12月19日

仙石通泰ブログ35 Optimization 経営を考える「黎明を生きるこころ」①

早くも師走となりました。時の流れの速いこと速いこと。世の中の移り変わりが超特急のように駆け抜けてゆきます。洞爺湖サミットがことしの夏だったという実感さえ遠のき、北京五輪もかなり過去のような感じがしてなりません。

これはまさにインターネットが私たちの生活に”どかん”と入り込んできて、携帯電話の普及とともに人と人とのコミュニケーションが一瞬にして双方向で可能となったからではないでしょうか。ということは生活もまた急ピッチで変化してゆきます。

その変化をきちんと読み理解し対応してゆくことがビジネスを左右してゆくように思います。私がこのBlogで何度も語ってきたようにデジタル社会を生きるにはOptimization(最適化)がキイワードではないか、と考えています。

ことしの流行語大賞に「アラフォー」と「グ~!」が選ばれました。この言葉の意味をすぐ分かるお年寄りはいったいどれくらいの割合でしょうか。少なくともテレビのドラマやお笑い番組にあまり関心がない世代にとっては何のことやら分からないでしょう。

40代前後の輝く女性たちを指す言葉が「Around 40」(アラウンド・フォーティーを短縮して「アラフォー」)です。「グー!」は人気お笑いタレント、エドはるみさんのギャグでした。北京オリンピックのソフトボールで金メダルを獲得したエース上野由岐子選手の「上野の413球」も特別賞だそうです。女性群の活躍が際立ちます。

一方、プロレタリア文学の名作、小林多喜二の「蟹工船」がブームとなり、若者が読んでいるそうです。また「後期高齢者」とか「名ばかり管理職」という嫌味な響きの言葉が流行したのも時代を映し出しているのでしょうか。

アメリカ人は圧倒的な票差で黒人政治家、バラク・オバマを第44代大統領に選びました。オバマに集まった巨額の選挙資金はウエブによる大衆カンパでした。Youtubeでの討論など大統領候補と選挙民がインターネットで直接、触れ合うことができた史上初の選挙、究極の民主主義ではなかったか、と私は考えています。

アメリカはオバマという新しいタイプの指導者により、大きく変わるでしょう。1960年の選挙で共和党のニクソンを破った民主党のジョン・F・ケネディを想いだします。選挙戦でニクソンにリードされていたケネディが僅差で勝てたのはテレビ討論だった、と言われています。テレビもインターネットも政治を変えるパワーを有しているのです。
進化した技術を選挙戦術としてうまく使った側が勝利することができた。会社経営も同じです。デジタル社会の到来に対応してOptimization 経営を率先して取り込むことができる会社がサバイブできると思います。

2008年11月20日

仙石通泰ブログ34 Optimization 経営を考える「文明が飛躍する時」⑧

Googleキャンパスを訪れ、その革命的経営思想を目の当たりにして触発されるものはありました。基本的にGoogleの経営者は世界中から最優秀の人材を一手に集め、快適な職場環境を提供し、そこから世界一、だれも追随できないような優れた技術をさらに開発して行こうということなのでしょう。
その結果はGoogle EarthやPicasaのように、思いつくけれど誰もやっていない(実現できなかった)ような無料サービスが、ある日突然Googleからリリースされることからうかがうことが出来ます。

従来の「人事管理」という考え方を完璧に棄てきっています。経営側は開発戦略を示して後はすべてを現場スタッフに任せる。そしてスタッフが開発する結果から優れた技術を採用してGoogleが提供するシステムに組み込んでゆく。徹底的な結果重視でスタッフを評価するという経営思想なのです。

30歳のN君の待遇を聞けばまず日本の企業ではありえないほど凄い。それに見合う斬新な発想、閃いた鋭いアイディアでソフトを開発してゆく実行力が伴わないと競争からドロップせざるを得ません。そのプレッシャーはまた想像を超える厳しさであろうことはN君の言葉の端端から伺えました。

Googleの経営に翳りが出てきた、と思わせる記事がNew York Times紙に出ました。2008年7月5日の同紙のwebsiteはJoe Nocera記者の「On Day Care, Google Makes a Rare Fumble(デイ・ケアで珍しく躓くGoogle)」という記事が掲載されました。Googleは社員の幼児のデイ・ケア・サービスを見直し、費用を倍額にすることを検討している、という観測記事です。

しかもこの記事のよるとGoogleの株価はピーク時、2007年11月、740ドルだったのが、記事が書かれた2008年7月の時点で490ドルと43%も急落、ダウ・ジョーンズの平均株価の値下げ率17%より下げ幅が大きいと指摘しています。

2004年の株式公開後、IT業界の革命児・Googleの進撃は並みいるITベンチャーを圧倒し、公開後わずか3年で8.7倍に急伸し、Micro Softに迫る成長で注目されたことは本Blogで先述しました。そのGoogleに翳りが見え、株価が下がってきた。

食費無料、構内にスポーツクラブ、出産支援、育児援助、洗車、オイル交換設備など注目された従業員の優遇政策を全面的に見直す、というNY Timesの記事は大きな反響を呼んでいます。そしてこの社員厚遇政策を止めたら優秀な社員が流出するかも知れないと暗示しています。

2年連続で『Fortune Magazine』が、”Best Company to Work For(就労最優良企業)”と評価したGoogleが輝きを失いつつある、というNY紙のコラムは厳しい開発競争で鎬を削る最先端技術業界の凄まじさを実感させるものがあります。Googleキャンパスを実際に見てきた直後だっただけに考えさせられる記事でした。

2008年10月30日

仙石通泰ブログ33 Optimization 経営を考える「文明が飛躍する時」⑦

ぼくら一行はGoogleの中堅技術者(といっても未だ30歳の若者ですが)N君を訪ねました。「Googleのキャンパスを見に行きませんか」と誘ってくれたジャーナリストの友人の息子さんで、日系二世です。メールで指定されたビルに行ったのですが、受付に誰もいない。

携帯に電話してもメッセージが満杯で繋がりません。途方にくれていると女性が通りかかったので「N君とアポがあるのですが・・・」?と訊くと「ちょっと待って」とオフィスに探しに行ってくれました。話を傍のソファで聞いていた女性がパソコンでN君にメッセージを送ってくれたらしい。

「N君、すぐ来るわよ。メール送ったら『今、行く』って返事あったから」玄関のソファで数人がノート・パソコンを膝の上に乗せてモニターを見つめています。誰も無言でキイを叩いています。後で分かったのですが、その人たちもGoogleで「仕事」をしていたのだそうです。

スタッフのデスクはありますが、どこで仕事をしても、何時休んでも、遊んでいても各人の自由なのだそうです。N君のオフィスを見せてもらったのですが、狭くてデスクとパソコン以外なんにもない。何時間もサイバー・スペースに入り込んで仕事をしているとストレスを感じるのでしょう。別の空間で気分を変えたいのかもしれません。

Googleの世界はなにか雑然として、組織性とか統一性が感じられません。オープン・スペースに抽象のオブジェが並んでいたり、パソコンで描いた絵や写真が展示してあったり。子供の遊びのようなスペース、どうも表現しにくいのですが、大学の雰囲気と幼稚園の遊戯場が混ざり合ったような実に妙な不思議空間といった印象でした。

「ソフト開発は徹底的にクリエイティヴな発想が必要です。ですからスタッフの“閃き”が大切です。人間、自由でないと新しい発想、閃きが出てこない。ぼくらはそんな気分で仕事をしているのです」

閃いたらそこですぐ、パソコンにアイディアを打ち込んでみるのだという。実直なN君の説明に納得したような、できないような気分でした。ある建物のロビーのような空間に70インチくらいの大きなパソコンのモニターがありました。モニターは画面いっぱい宇宙から見下ろした地球を映し出しています。

この地球上のあらゆる情報をデータベース化し、検索できるようにする~という冷静に考えてみれば空恐ろしいことを実際に実現しようとしているのがGoogleという企業なのです。例えばですね、とN君はモニターの地球儀にマウスを当てて動かし始めました。

「これは全世界の女性の就労比率を表示しています。これを見ますとどの国が女性の就労度が高いか低いか、すぐ分かります」Googleのデータ検索技術で、世界各国が公開している公的情報を刻々、計算して比較表示している実例を見せてくれました。

バーベギューの光景に出くわしました。雲ひとつ無いカリフォルニアの空、まるでピクニックのような気分になります。焼いた肉をもらって野外のベンチに腰掛け、Googleの社員になったつもりでバーベギューをいただきました。

Googleのキャンパスで目撃した光景はIT革命が行き着く先の企業のありうべき姿を先取りしているのか、それともGoogleという特殊な会社だけの特殊な経営思想によるものなのか、私には判断不能で複雑な感慨を覚えました。

2008年10月15日

仙石通泰ブログ32 Optimization 経営を考える「文明が飛躍する時」⑥

Googleという怪物企業について考えてみたい。それはOptimization 経営理論に深く関係するからです。数多くのIT関連ベンチャー・ビジネスが起業してきた中でGoogleは発想という点からして、群を抜いて特異で革命的な経営思想のもとに出現しました。

ウエブという無限の情報界を市場とし、ウエブ上で売買活動をコンピューターにさせるための枠組みを活性化したのです。検索エンジンという技術が深く関わっているため“サーチ・エコノミー”という言葉を使う人がいます。「検索経済」、消費者が買いたいものを検索して買い物するのです。

Amazonという本のウエブ販売サイトはあまりにも有名です。今、Amazonは230万点の書籍をウエブに載せているそうです。ベストセラーではなく細々と売れてゆく本が全体の売り上げの8割を占めるという、それを“ロング・テール現象”といいます。

従来の書店販売では売れ筋のベスト・セラーを平積みにして売る。売れない本はすぐ取り次ぎに返本してしまう。それをAmazonはウエブに載せる(書名をリストするだけ)ことで販売コストを限りなく下げ販売点数を限りなく拡大して、これまで書店では絶対実現できなかった少数多種類販売方式を検索エンジンが現実化したのです。

10万部売れたベストセラーの1冊と1冊しか売れない本だが10万冊をリストして売ったAmazonと金額では同じです。これがロング・テールと呼ばれる現象。マーケッティング理論で「パレートの法則」と呼ばれるグラフからイメージされた言葉で、商品全体の2割の売れ筋商品が金額で売り上げの8割を占め、商品の数を多くすればそれは恐竜(売り上げの2割が頭部分に相当)の長い尻尾に見えることから名づけられました。

日経新聞によればGoogleの時価総額は2008年8月時点で1572億ドル(約18兆円)を越えます。Microsoft(MS)が2160億ドル(約30兆円)といいますから、未だMSには及びませんが、アップルとほぼ同額です。eBay(5兆5600億円), Yahoo(4兆3440億円) Amazon(2兆1120億円)といった先発のITベンチャーをはるかに抜いて、いまやITの世界で最後発企業ながらGoogleはMSを急追しています。

Googleが注目されているのは「広告の最適化」でした。売る側としては「買いたい意思のある人」に広告したい。テレビや新聞のようにマス・メディアへの広告の出稿は広告費が高い割りに効果は期待薄です。その広告効果をGoogleは「検索」技術で最適化しました。

アドワーズという検索サービスはキーワードに関連する広告を同じページに載せます。「サーフィン」が好きな人なら「サーフィン」というキーワードが出たページにその関連広告を載せる、という広告方式です。Googleはさらに個人のホームページに広告を配信するアドセンスという広告サービスも投入しました。

2005年の第3四半期のGoogleの売り上げは15億7845万6000ドルだったが、その98.8%までアドワーズとアドセンスの広告が占めていた、と佐々木俊尚著『グーグルGoogle~既存のビジネスを破壊する』(文春新書)は紹介しています。購買者を狙った“ターゲット・アド”でGoogleは大成功しました。まさに最適化された広告こそ究極のアドと言えるでしょう。

2008年09月25日

仙石通泰ブログ31 Optimization 経営を考える「文明が飛躍する時」⑤

LAでのシンポジウムの翌日、サンフランシスコへ飛びました。主宰者のジャーナリストが「Googleキャンパスを覗きに行きませんか」という誘いに乗ったのです。新社屋建設のレイアウトが話題になった時、Google Campusは一見の価値がある、というのです。

もちろん誰でもキャンパス内に入れるわけではありません。GoogleはMountain Viewというシリコンバレーのど真ん中に位置する町にあり、ビルだけで10数棟もあります。Amphitheatre Parkwayという通りを走るとGoogleのロゴが張り付いたビルだらけです。

どのドアも電子的にロックされていますからGoogleのスタッフを訪ねる、ということでないと内部に立ち入ることはできません。いま、もっとも革新的、先鋭的と言えるシリコンバレーの中心地に勃興したIT企業Googleのキャンパスはもう驚嘆の連続でした。

24時間、いつ出社しても退社も従業員の勝手です。勤務時間は自由で、従業員個人が決めます。構内20箇所のレストランで1日3食すべてタダ、食べ放題。ドリンクやフルーツはどこにも置いてありもちろん無料です。オフィスは、まるで遊戯場の雰囲気でした。

仕事に飽きたらビーチバレーもできるしフィットネス・ルームに行って体を鍛えてもいい。実際、ビーチバレーで遊んでいた場に創業者のひとりがいました。Googleの創業者はLawrence Larry PageとSergey Brinと言い、二人ともスタンフォード大学の同級生で、1973年の生まれですから35歳と若い。

それがGoogleのキャンパスでした。構内をガイドしてくれたN君は29歳で、200人のグループ・リーダーです。アイビー・リーグの一つ、M大学のコンピューター・サイエンスを卒業してマイクロ・ソフトに入社。シアトルの本社でソフト開発のSEとしてスタートを切ったのですが、2004年Googleに移ったそうです。

N君が入った2004年はGoogleが株式を公開した年でした。本社キャンパスには800人くらい。それが今では1万人(全世界ベースで2万人)。スタッフの80%がPh.D.(哲学博士)か、MBA(経営学修士)取得者だそうです。米国はもとより世界の頭脳が集まっています。

ロシア人、インド人、中国人、韓国人など多人種多様社会ですが、日本人は極端に少ない。正確な数字は企業秘密ですが二桁の下の方。「日本人は英語が話せない人が多いから採用されません。それにソフトの開発能力や技術力のレベルが低いのです」と意外な評価でした。

20代で年収20~30万ドル(2000万~3000万円)がいて、しかも責任の重さによってストック・オプションがあります。Googleの株価は公開時して2年3か月で6倍になったからシリコンバレーの高級住宅地に豪華マンションを買い、自動車はベンツかBMWが多い。

まるでシンデレラ物語の現代版の様相ですが、もちろんGoogleが順風満帆というわけではありません。最近に株価は下がり気味、従業員の食事をタダ、というのを見直す、という記事を見ました。