About 2008年10月

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2008年10月15日

仙石通泰ブログ32 Optimization 経営を考える「文明が飛躍する時」⑥

Googleという怪物企業について考えてみたい。それはOptimization 経営理論に深く関係するからです。数多くのIT関連ベンチャー・ビジネスが起業してきた中でGoogleは発想という点からして、群を抜いて特異で革命的な経営思想のもとに出現しました。

ウエブという無限の情報界を市場とし、ウエブ上で売買活動をコンピューターにさせるための枠組みを活性化したのです。検索エンジンという技術が深く関わっているため“サーチ・エコノミー”という言葉を使う人がいます。「検索経済」、消費者が買いたいものを検索して買い物するのです。

Amazonという本のウエブ販売サイトはあまりにも有名です。今、Amazonは230万点の書籍をウエブに載せているそうです。ベストセラーではなく細々と売れてゆく本が全体の売り上げの8割を占めるという、それを“ロング・テール現象”といいます。

従来の書店販売では売れ筋のベスト・セラーを平積みにして売る。売れない本はすぐ取り次ぎに返本してしまう。それをAmazonはウエブに載せる(書名をリストするだけ)ことで販売コストを限りなく下げ販売点数を限りなく拡大して、これまで書店では絶対実現できなかった少数多種類販売方式を検索エンジンが現実化したのです。

10万部売れたベストセラーの1冊と1冊しか売れない本だが10万冊をリストして売ったAmazonと金額では同じです。これがロング・テールと呼ばれる現象。マーケッティング理論で「パレートの法則」と呼ばれるグラフからイメージされた言葉で、商品全体の2割の売れ筋商品が金額で売り上げの8割を占め、商品の数を多くすればそれは恐竜(売り上げの2割が頭部分に相当)の長い尻尾に見えることから名づけられました。

日経新聞によればGoogleの時価総額は2008年8月時点で1572億ドル(約18兆円)を越えます。Microsoft(MS)が2160億ドル(約30兆円)といいますから、未だMSには及びませんが、アップルとほぼ同額です。eBay(5兆5600億円), Yahoo(4兆3440億円) Amazon(2兆1120億円)といった先発のITベンチャーをはるかに抜いて、いまやITの世界で最後発企業ながらGoogleはMSを急追しています。

Googleが注目されているのは「広告の最適化」でした。売る側としては「買いたい意思のある人」に広告したい。テレビや新聞のようにマス・メディアへの広告の出稿は広告費が高い割りに効果は期待薄です。その広告効果をGoogleは「検索」技術で最適化しました。

アドワーズという検索サービスはキーワードに関連する広告を同じページに載せます。「サーフィン」が好きな人なら「サーフィン」というキーワードが出たページにその関連広告を載せる、という広告方式です。Googleはさらに個人のホームページに広告を配信するアドセンスという広告サービスも投入しました。

2005年の第3四半期のGoogleの売り上げは15億7845万6000ドルだったが、その98.8%までアドワーズとアドセンスの広告が占めていた、と佐々木俊尚著『グーグルGoogle~既存のビジネスを破壊する』(文春新書)は紹介しています。購買者を狙った“ターゲット・アド”でGoogleは大成功しました。まさに最適化された広告こそ究極のアドと言えるでしょう。

2008年10月30日

仙石通泰ブログ33 Optimization 経営を考える「文明が飛躍する時」⑦

ぼくら一行はGoogleの中堅技術者(といっても未だ30歳の若者ですが)N君を訪ねました。「Googleのキャンパスを見に行きませんか」と誘ってくれたジャーナリストの友人の息子さんで、日系二世です。メールで指定されたビルに行ったのですが、受付に誰もいない。

携帯に電話してもメッセージが満杯で繋がりません。途方にくれていると女性が通りかかったので「N君とアポがあるのですが・・・」?と訊くと「ちょっと待って」とオフィスに探しに行ってくれました。話を傍のソファで聞いていた女性がパソコンでN君にメッセージを送ってくれたらしい。

「N君、すぐ来るわよ。メール送ったら『今、行く』って返事あったから」玄関のソファで数人がノート・パソコンを膝の上に乗せてモニターを見つめています。誰も無言でキイを叩いています。後で分かったのですが、その人たちもGoogleで「仕事」をしていたのだそうです。

スタッフのデスクはありますが、どこで仕事をしても、何時休んでも、遊んでいても各人の自由なのだそうです。N君のオフィスを見せてもらったのですが、狭くてデスクとパソコン以外なんにもない。何時間もサイバー・スペースに入り込んで仕事をしているとストレスを感じるのでしょう。別の空間で気分を変えたいのかもしれません。

Googleの世界はなにか雑然として、組織性とか統一性が感じられません。オープン・スペースに抽象のオブジェが並んでいたり、パソコンで描いた絵や写真が展示してあったり。子供の遊びのようなスペース、どうも表現しにくいのですが、大学の雰囲気と幼稚園の遊戯場が混ざり合ったような実に妙な不思議空間といった印象でした。

「ソフト開発は徹底的にクリエイティヴな発想が必要です。ですからスタッフの“閃き”が大切です。人間、自由でないと新しい発想、閃きが出てこない。ぼくらはそんな気分で仕事をしているのです」

閃いたらそこですぐ、パソコンにアイディアを打ち込んでみるのだという。実直なN君の説明に納得したような、できないような気分でした。ある建物のロビーのような空間に70インチくらいの大きなパソコンのモニターがありました。モニターは画面いっぱい宇宙から見下ろした地球を映し出しています。

この地球上のあらゆる情報をデータベース化し、検索できるようにする~という冷静に考えてみれば空恐ろしいことを実際に実現しようとしているのがGoogleという企業なのです。例えばですね、とN君はモニターの地球儀にマウスを当てて動かし始めました。

「これは全世界の女性の就労比率を表示しています。これを見ますとどの国が女性の就労度が高いか低いか、すぐ分かります」Googleのデータ検索技術で、世界各国が公開している公的情報を刻々、計算して比較表示している実例を見せてくれました。

バーベギューの光景に出くわしました。雲ひとつ無いカリフォルニアの空、まるでピクニックのような気分になります。焼いた肉をもらって野外のベンチに腰掛け、Googleの社員になったつもりでバーベギューをいただきました。

Googleのキャンパスで目撃した光景はIT革命が行き着く先の企業のありうべき姿を先取りしているのか、それともGoogleという特殊な会社だけの特殊な経営思想によるものなのか、私には判断不能で複雑な感慨を覚えました。