ぼくら一行はGoogleの中堅技術者(といっても未だ30歳の若者ですが)N君を訪ねました。「Googleのキャンパスを見に行きませんか」と誘ってくれたジャーナリストの友人の息子さんで、日系二世です。メールで指定されたビルに行ったのですが、受付に誰もいない。
携帯に電話してもメッセージが満杯で繋がりません。途方にくれていると女性が通りかかったので「N君とアポがあるのですが・・・」?と訊くと「ちょっと待って」とオフィスに探しに行ってくれました。話を傍のソファで聞いていた女性がパソコンでN君にメッセージを送ってくれたらしい。
「N君、すぐ来るわよ。メール送ったら『今、行く』って返事あったから」玄関のソファで数人がノート・パソコンを膝の上に乗せてモニターを見つめています。誰も無言でキイを叩いています。後で分かったのですが、その人たちもGoogleで「仕事」をしていたのだそうです。
スタッフのデスクはありますが、どこで仕事をしても、何時休んでも、遊んでいても各人の自由なのだそうです。N君のオフィスを見せてもらったのですが、狭くてデスクとパソコン以外なんにもない。何時間もサイバー・スペースに入り込んで仕事をしているとストレスを感じるのでしょう。別の空間で気分を変えたいのかもしれません。
Googleの世界はなにか雑然として、組織性とか統一性が感じられません。オープン・スペースに抽象のオブジェが並んでいたり、パソコンで描いた絵や写真が展示してあったり。子供の遊びのようなスペース、どうも表現しにくいのですが、大学の雰囲気と幼稚園の遊戯場が混ざり合ったような実に妙な不思議空間といった印象でした。
「ソフト開発は徹底的にクリエイティヴな発想が必要です。ですからスタッフの“閃き”が大切です。人間、自由でないと新しい発想、閃きが出てこない。ぼくらはそんな気分で仕事をしているのです」
閃いたらそこですぐ、パソコンにアイディアを打ち込んでみるのだという。実直なN君の説明に納得したような、できないような気分でした。ある建物のロビーのような空間に70インチくらいの大きなパソコンのモニターがありました。モニターは画面いっぱい宇宙から見下ろした地球を映し出しています。
この地球上のあらゆる情報をデータベース化し、検索できるようにする~という冷静に考えてみれば空恐ろしいことを実際に実現しようとしているのがGoogleという企業なのです。例えばですね、とN君はモニターの地球儀にマウスを当てて動かし始めました。
「これは全世界の女性の就労比率を表示しています。これを見ますとどの国が女性の就労度が高いか低いか、すぐ分かります」Googleのデータ検索技術で、世界各国が公開している公的情報を刻々、計算して比較表示している実例を見せてくれました。
バーベギューの光景に出くわしました。雲ひとつ無いカリフォルニアの空、まるでピクニックのような気分になります。焼いた肉をもらって野外のベンチに腰掛け、Googleの社員になったつもりでバーベギューをいただきました。
Googleのキャンパスで目撃した光景はIT革命が行き着く先の企業のありうべき姿を先取りしているのか、それともGoogleという特殊な会社だけの特殊な経営思想によるものなのか、私には判断不能で複雑な感慨を覚えました。
